F-850は異業種の杉山電機製作所が販売した異色のトランシーバー
2019/02/21 更新
非常に珍しい杉山電機製作所のF-850が入荷しました。
異業種の杉山電機製作所が激戦のアマチュア無線機に参入
F-850を売り出した杉山電機製作所は現在の杉山電機システム株式会社です。
その杉山電機製作所が無線機の技術競争が激しく、各社がしのぎを削っていた1970年代後半に、アマチュア無線業界に参入してきたのは驚きでした。
当時はナショナルやNECの家電メーカーをはじめ、中小のメーカーが入り乱れておりました。
1970年代半ばには米国を抜いて、世界一のアマチュア無線人口となり、最盛期には約135万局あったアマチュア局ですが、1995年(平成7年)を境に減少に転じて、現状は右肩下がりの状況です。
総務省の発表によると、2018年7月末のアマチュア無線局数は42万2,504局です。
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F-850とは
1979年に 杉山電機製作所から発売発売されたF-850は
F-850S 3.5-30/50/144MHz SSB/CW/AM/FM 10W 196,000
F-850D 3.5-30/50/144MHz SSB/CW/AM/FM 100W 220,000
の2種類です。
ちなみに同時期のトリオ(現ケンウッド)、ヤエス無線、アイコムのHF機は下記の通りで、いずれも144MHz帯はもちろん50MHz帯も含まれておりません。
TS-180X トリオ トランシ-バ- 3.5-29.7MHz SSB/CW/RTTY 10W 165,000
FT-107SM 八重洲無線 トランシ-バ- 3.5-30MHz SSB/CW/AM/RTTY 10W 195,000
IC-710S アイコム トランシ-バ- 3.5-28MHz SSB/CW/FM 10W 195,000
今ではV/UHFを含んだHF機は当たり前になりましたが、当時は50/144MHz帯を搭載したのはF-850だけでした。
取り扱い説明書によると受信トップにFET全盛だったこの時期にあえて、CATV用のPT3.5Wの2SC1426を採用して、インターセプトポイント+28dBm、ダイナミックレンジ100dBを実現しております。
受信部のシングルスーパーと共に当時興味を抱いた一番の要因です。
外観は大きめのいかにも無線機と言った据え置きタイプで、バンドスィッチとモードスィッチがプッシュスィッチの2段構えが特徴的です。
◎1.8~144MHz帯の全アマチュアバンドと、JJY(15MHz受信のみ)がフルカバーできます。
◎SSB(USB,LSB),CW,AM,FMのオールモードで運用できます。
◎操作が容易なノーチューニング設計で、セレクトボタンを押すだけで切り替わります。
◎ハイレベルのDBMを使用し、1.8~14MHzにおいて100dB,21~144MHzにおいては95dBという超ワイドなダイナミックレンジを得ております。
◎大型のLEDを使用し、各バンド各モードにおける正確な運用周波数を100Hzオーダーで表示します。
◎受信機の選択度を0.4,1.2,1.8,2.4KHzの4段階に選択切り替えができます。
ただしFMモードの時は、このスィッチに関係なくセット内部で、16KHzに固定されます。
◎本機のVOX回路は復帰時間をSLOW,FASTと2段階に切り替えができます。
SLOWを電話用、FASTをCW用に使い分けます。
またCW運用時、復帰時間を短くしてハイスピードブレークイン運用ができ、CWサイドトーンと併せてハイレベルのCWオペレーションができます。
◎コンプレッションレベル可変のスピーチプロセッサーを内蔵しています。
マイクゲインをあげていくと、ある位置から動作を始めます。
◎スィッチ切り替え式のセンターメーターを装備していますので、相手局に正確に同調がとれます。
なおメーターはFM以外のモードでは、メータースィッチの設定に関係なくSメーターとして動作します。
◎FM,CWモードでは、約1Wから10Wまでパネル面のツマミで連続可変できます。
◎JJYと25KHzマーカーで正確に周波数校正ができます。
◎AC100VまたはDC13.5Vのどちらでも運用できる2電源方式です。
F-850の定格
●周波数範囲
1.8MHz帯 : 1.5~2.0MHz
3.5MHz帯 : 3.5~4.0MHz
7MHz帯 : 7.0~7.5MHz
14MHz帯 : 14.0~15MHz(14.5~15.0MHz受信のみ)
21MHz帯 : 21.0~21.5MHz
28MHz帯 : 28.0~30MHz
50MHz帯 : 50.0~54.0MHz
144MHz帯 : 144.0~146MHz
●電波型式 A3J(USB/LSB) A1(CW) A3(AM) F3(FM)
●送信出力 A3J,A1,F3 : 10W A3 : 5W (A1,F3は約1W~10W可変)
●空中線インピーダンス : 50Ω
●搬送波抑圧比 : 40dB以上
●側帯波抑圧比 : 40dB以上
●不要輻射強度 高調波ー60dB以下(1.8~28MHz帯) ー70dB以下(50~144MHz帯)
その他ー50dB以下(1.8~28MHz帯) ー60dB以下(50~144MH帯)
●第3次混変調歪 : ー30dB以下
●変調方式 A3J : 平衡変調 A3 : 低電力変調 F3 : リアクタンス変調
●マイクインピーダンス : 600Ω
●送信周波数特性 : 300~2700Hz(ー3dB)
●周波数安定度 スィッチオン1分後~60分後まで±1KHz以下、その後30分当たり100Hz以下
●受信方式 シングルスーパーヘテロダイン
●IF周波数 : 12.375MHz
●受信感度 0.50μV S/N 10dB (1.8~14MHz帯) 0.18μV S/N 10dB (21~144MHz帯)
●ダイナミックレンジ 100dB, IP.28dBm(1.8MHz~14MHz)
95dB,IP.13dBm(21MHz~144MHz)
●イメージ比 : 60dB以上
●IF妨害比 : 70dB以上
●選択度 : 0.4,1.2,1.8,2.4KHz(ー6dB) ただしFMモードは16KHz固定
●スケルチ感度 : 0.33μV以下(FMモードのみ)
●低周波出力 : 2.5W以上(10%歪時)
●低周波出力インピーダンス : 4~8Ω
●電源 : AC 100V 50/60Hz DC 13.5V マイナス接地
●消費電力 DC13.5V 受信時 1.5A 送信時 3.5A
AC100V 受信時 50VA 送信時 118VA
●寸法 幅380X高さ180X奥行397mm(突起物を含む最大寸法)
●重量 約14Kg
あまりにも先取りし過ぎた
異色のトランシーバーでしたが、実績がなかった事も影響して、残念ながら厳しい販売競争には勝てなかったようで、F-850の一機種のみで撤退してしまいました。
杉山電機製作所からこれに続く後継機が発表がなかったことから、知る人ぞしる希少機です。
当時のカタログには、周辺機器として、リニアアンプや外部VFOも近日発売と告知しておりましたが、残念ながら売れ行きが芳しくなく実現しませんでした。
販売戦略にも問題があったように思います。
名古屋のメーカーでありながら、探し方が悪かったのかも知れませんが、豊橋や豊川はおろか名古屋のハムショップにも店頭で見かける事はありませんでした。
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